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24時間Illustrator「愛(Ai)はクリエイティブを救う」

[108] 卒業

06/03/28 14:00 [108] 卒業

娘の卒業式に出る。親のことを考えてくれているのだろう、土曜日だった。お 父さんも大勢来ていたし、おじいちゃんおばあちゃん総出演のところもある。

一人ずつ大きく手を振って入場し、着席。名を呼ばれ、壇上で自分の「夢」を 一言語る。中学への期待を話す子もいれば、将来の職業に触れる子もいる。校 長から卒業証書をもらい、壇を下りる。ぐるっと会場を回るように歩き、半分 くらいのところで証書をケースに入れてもらって、自席に戻る。

何曲か涙腺を刺激する歌を歌い、在校生からの送る言葉、そして自分達は一年 生からの主な出来事を順々に触れながら、全員が一言は台詞がある劇調の感謝 の言葉を演じる。

ブレザー調の子もいれば、スーツ風の子もいる。長すぎて袖まくりだけでなく、 ズボンの裾も何重にもまくっている子もいる。大人に背伸びしつつも、まだま だあどけない笑顔が時折こぼれ落ちる。退場時には、ミッキーのタオルで涙を 拭いながらシャクリ上げる子もいた。

顔と名前が一致する子供達が何人もいて、その緊張感がひしひしと伝わってく る。自分の頃を思い出すけれど、誰も歩き方なんか見ちゃいない。本人だけが 緊張してる。おかしいけれど、どこか厳か。笑えない真剣な雰囲気が漂う。

目頭も熱くなったけれど、私には安堵感が一杯の式だった。これで「小学校」 から開放される。「子供が親になっても良いのか」と自問した我が子の誕生の 瞬間から、早や十二年が経ったことになる(息子もいるので実際は十四年)。 一つの責任を果たした感がある。

そうした時に、こういうセレモニーって大切だなと思う。物事には節目があり、 その時には襟を正す。いつもダラダラと「日常」が続く訳ではない。襟を正す 時があり、背伸びをしなければ格好が付かない時がある。それを思い出させて くれる。

■わざわざ苦しい道を選ぶ

考えてみれば、留まっているのが好きではないのだろう。いつもせわしなく何 かに追われるように仕事をしている。せっかく自分なりの手順なりルールがで きたと思ったら、それを捨てて違う世界に変わっている。

Webのデザインも、自分なりの方法も分かってきたし、行動パターンも見えて きた。これから楽してそれを回していけば良いところまで来たのに、わざわざ 苦しい道を選び始める。

Ridualを始めたときもそう。誰も新しいツールなんて望んではいなかった。有 名なツールは沢山あったし、それらを使い続ければ事足りた。むしろ、それら を使いこなすのに精一杯だった。

でも、痒いところに手が届かない。結局、ソフトAからソフトBにデータを移そ うと思うと、手でコピー&ペーストしている。サイトマップを描こうと思った ら、搭載されている出力ではクライアントに提出できる品質ではない。

パソコンは仕事を楽にしてくれる道具ではない。仕事の品質を上げるための道 具だ。なのに、出回っているツールだけでは品質を上げられない。そのツール の子守りのような作業が必須だった。

本当にこんなことも自動でできない訳? とチャレンジを始める。当然、その 時点で捨て去るものがあり、新しい出会いがある。その度に襟を正して、荷物 を整理して、新しい場所に向かう。

緊張するけれど、去年と同じ場所に今年もいることの方が、なんだか嫌だった。 サラリーマンである以上、せいぜい40回も春を迎えれば退職になる。40回しか アップグレードのチャンスはないと言い換えても良いかもしれない。

「命短し、恋せよ乙女」。別に乙女でもないけれど、この言葉が好きだ。そう 時間はない。もっと上へ行きたい。自分が反復運動で毎回やっている作業なん て、絶対にソフトの仕事で、人間の仕事じゃなくなる。私がやるべきことは他 にある。

■Stay hungry, stay foolish.

緊張にこわばった顔をしている子供達を見ながら、改めて思うことがある。こ の中の何人かが、Web屋になるかもしれない。でも、私がしている「つまらな い部分」の仕事はして欲しくない。

自動化できるはずのコピペ作業なんか通り越して、もっと先のところで仕事を してて欲しい。その頃私は、とうに役立たずで理解もおぼつかなくなっている かもしれない。でもそれでいい。

いつも家の隣の公園で見える、馬鹿騒ぎしている子供達が凛々しく映る。暗い 未来の話しか聞こえて来ないけれど、根拠もなく大丈夫だと思える気がしてく る。そして、何かエールを送りたくなってくる。

お偉いさんが式の最中語る言葉は、半分は来賓や親御さんへの感謝の言葉だっ た。でも、その頼りなくも凛々しい子供達に、言葉をもっと贈ってあげたかっ た。もっと励ましてあげたかった。励まして欲しかった。

小学校という場所で、小学生という立場のうちに、語りかける最後のチャンス だったのに。先生でもないのに、少し悔やむ。

突然、Steve Jobsがスタンフォード大の卒業式で語った言葉を思い出す。まだ この子たちには早すぎるかもしれない。でもいつか接して欲しい。頑張れ!

Stay hungry, stay foolish.
(満ち足りるな、笑われても信じる道を進み続けろ:完全意訳)
【英】【映】【訳】

以上。/mitsui

ps.有休を約30日捨てました。私も卒業。隣の公園は桜が八分咲き。綺麗。