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[135] CMSな人:RCMS、SOYCMS、TYPO3、eZ Publish

サイトのデザインをするということは、見栄えについての悩みを解消するだけにはとどまらない。文字通り、「デザイン=設計」であり、様々な事柄の設計を担当する。開店前に、開店後の日々の状況を考えるのも、そのひとつ。「運用」は大きな課題であり、先読みして負荷軽減を図らないと、みるみるサイトが劣化してしまう。情報は鮮度が命、Webサイトでは運用がその動脈である。

そのサイトという生き物を支える骨格が、運用システムであり、広義のCコンテンツ・マネージメント・システム(CMS)と呼んでよいだろう。CMSは手作りの独自システムから、製品、オープンソース(OSS)まで、値段も機能も千差万別である。自分達の運用体制に適したものを探すこと自体が難しい。

クライアントにとって難しい領域は、即ちWeb屋が頑張る領域でもある。折に触れ提案を求められる。ということで、日々それなりの調査を重ねている。自分達の得意分野を押さえつつ、日進月歩の技術とコンセプトを追う。今回は、そんな中で出会った方々を軽く紹介したい。

■ 真摯な視線のKさん@RCMS

先輩社員から伝え聞き、デジクリ読者の方も絡んでいたので、勉強会に参加した。会場は、SINAPさん。外見は普通の住宅なのに、中はまさに絵に描いたようなデザイン会社。足を踏み入れるだけでワクワクする。

そこで語られた「RCMS」は、「世の中の9割のWEBサイトはシステム化できる」というコンセプトの下に開発されたもの。サイトに行けば実感するが、主としてSaaS型のもの。インストール等の手間から開放され、様々なサポートがオンラインで受けられる。何より感心するのが、その試用版のラクチンさ。少々情報を入力したら、約5分でサイトが出来上がり、管理画面へのログイン情報とともにmailで連絡が送られてくる。

コンセプト的なお勉強はした方がいいし、細かなカスタマイズにはSmartyをかじっておく方が良い。それでも、サイト内にある動画やマニュアルでかなりのことが自習型体験が可能なようにできている。

勉強会での説明は、派手目な演出もなく淡々と進む。でも質疑になった途端に視線が変わるのに気がついた。質問者の目を見る姿勢が真摯。できること、できないことを明確に分け、じっくりと説明してくる。まさにマンツーマンのサポート。なんだか良い。サービス精神に溢れたサイトの原点なのだろう。

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▼SINAP - 株式会社シナップ
http://sinap.jp/

■ ニーズが聞きたくてたまらないFさん@SOY CMS

会社にわざわざ来てくれたので勉強会に参加。「SOY CMS」。実装可能かを問うたびに、それ作りますという答えがすぐさま返ってくる。いやいや大丈夫かいと、こっちが心配するほどにアグレッシブ。ユーザが望むもので理にかなっているものなら、瞬時を置かずに実装してしまわないと気がすまないみたいだ。

物腰も柔らかく、そして若い。私のようなオジサン世代にとって、プラグラマブルな方というのは、どっしりとして話ベタなイメージがあるのだが、真逆の位置に感じる。だって作れるんだもん、作ってしまいましょうよ。そんな元気な声が聞こえてくる。

サイトに行くと、元気でシンプルな画面が目に飛び込んでくる、デザイナとの親和性の良さは、ググれば随所に書かれている。既存サイトの移行も比較的容易という点も嬉しい。しかもOSS。

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http://www.soycms.net/

■ 惚れ込んだんですとオーラを発するSさん@TYPO3

mixiマイミクの日記から辿り着いたCMS、「TYPO3」。最初の勉強会は、マンションの一室。ホントにここでいいのかと疑いながらドアを開け、結局終電まで色々と話す。日本では未だ知名度は低いけれど、欧州でのシェアは高い。

TYPOスクリプトでかなりかゆいところに手が届く(そうだ..未だ体感できるところまで勉強が進んでいないので伝聞)。別言語を憶えなければならない敷居の高さを嫌う人も多いけれど、最終的に色々と手を加えて行くのであれば、何かしら憶えなければならないのではないかと思っている。「色々やってもできない壁」と「色々と勉強すれば何でもできる」のバランスが鍵だろう。製品自体も、本体のエンジン部分と、プラグイン部分とに大きく分かれ、プラグイン部分の開発が作り手の腕の見せ所。多元語系で発達した経緯からも、その辺りの配慮も強め。

ご本人は、英語ができないというが、マニュアルや教本系の充実度は、圧倒的に英語と独語。これをモノにするのに、言語の壁を避けられる訳はなく、凄い努力を重ねたと創造するのだが、どこか飄々としている。

プレゼンも、はにかみながら人見知りっぽいという印象。人と話すよりもコードと格闘している方が好きなのかもしれない。それでも自分の壁を越えようとチャレンジを続けている動力源は、TYPO3への熱愛なんだろう。

ちなみに、製品名はタイプミスから来ているのではなく(笑)、タイポグラフィが由来。で、Versionが上がっても「TYPO3」で行くようである。現在Ver.4に向けて開発が進んでいる。

▼CMS TYPO3 スタイルチューン株式会社
http://www.typo3.ne.jp/

■ ヘタレですからと謙遜する眠らないエンジニアFさん@eZ Publish

TYPO3つながりで知ったCMS、「eZ Publish」。最初の勉強会では、短時間で実際にblogを作って見ましょうコースを実演。最初に言った時間を少し越えてしまったけれど、作りきった手さばきに熟練プロ根性が見え隠れ。でも、タイピングの手を止めずに、私はヘタレなので...と謙遜する。彼がヘタレならと思うと、もっと頑張らねばと思ってしまう。スケジュールを聞くと、日本中を飛び回って伝道している。なみのタフさではない。

次に凄さを感じたのは、TYPO3の勉強会。キチンと競合分析をしている姿が新鮮。いつも使い慣れている製品のベンダーは、理由は分からないが競合製品を余り見ていない。でも、ユーザは色々と試行錯誤しているものである。それを実際に分かっているのだろう。しかもTYPO3のSさんとも仲が良い。シリコンバレーで競合エンジニアがバーで談笑するような感じ。正攻法で情報交換している姿は清清(すがすが)しい。

▼eZ Publish - Open Source Enterprise Content Management System (CMS) for web content management solutions
http://ez.no/jp

さて、我がbA<* http://www.b-architects.com/ >は、クライアントに合わせた、最適な個別コミュニケーションの手段としてのデザインを提案/実装する会社だ。クライアントの状況、対象ユーザ、伝えたい事柄などを、一つ一つ絞り込み吟味して唯一無二の実装を行う。だから企業ブランドと合致した多くのサイトは、少なくとも他のサイトよりも寿命が長い。根幹にブレがないと、古びない。

それでも、いや、それだからこそ情報の汎用化には取り組まざるを得ない。様々な情報の形や大きさを、毎回異なる形でユーザに提供するのは、学習効率上よろしくない。同じ意味のものは同じ形で、似た意味のものは似た形で類推を喚起する必要もある。

情報の独自性と汎用性。このバランスは、おそらくどのような情報提供の場合でも考えなければならず、弊社は前者から取り組み、CMS業界は後者から取り組んでいっているのであろう(余り知られていないが、MTはかなり強い。エンジンよりも拡張の方がでかい納品物も多い)。

共通しているのは、お役に立ってこそという気概。ユーザ(利用者)がどうして欲しいのか、クライアント(発注者)は何がしたいのか、そこに対する姿勢。誰が喜ぶのを良しとするか。

CMSというシステム自体の比較も面白いが、それぞれを背負って立っている人の姿も味がある。そして良く見ると、そのひととなりが製品にも出ているような気がしないでもない。

グラフィックデザインという分野の方が、ぱっと見の存在感はあるのだと思う。しかし、敢えて伝わりにくい「情報の仕組み」に取り組む人たちが居る。会社ごとにそれが異なる手順で行われていることを百も承知で、それでも情報の仕組みの「あるべき論」を忘れずに挑んでいる。そして、様々な見せ方もある。論理説明あり、動画あり、アニメーションあり。デモや体験環境の提供。多種多彩なアプローチの仕方そのものも面白い。

恐らくCMSは、どれが一番巧く作られているかランキングではなく、どれが一番自分にフィットするかランキングが重要になっていくものだろう。つまり、製品比較をしている過程で、否が応でもクライアントは自分調査をしているのだ。私たちはどうやって情報を提供しているのか。そこもWebサイトデザインの開発プロセスで同様に問われる点である。どこか緊密な融合も睨みつつ、協走は続きそうである。精進精進。

以上。/mitsui

【みつい・ひでき】 感想などはmit_dgcr(a)yahoo.co.jpまで
時間がなくて、電車でタイピング。レノボに変わったThinkPadが諸々不便。月曜日はデジクリ、それ以外は基本仕事。杖をついているおかげで座れる確率が上がった。けれど、ボーッとしたくもあり。最近の取組みは、朝型への人格変革。夜を早められないままだと破綻する。朝日を見よう、と。今まで成功したためしがないことにチャレンジ中。眠い。