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24時間Illustrator「愛(Ai)はクリエイティブを救う」

[140]あるユーザ会

あるユーザ会に行ってきた。今回もいつものものではない。いつもとはグレード(会場、食事、...)が2~3レベルも上、当然雰囲気も違う。対象の製品の値段も、個人活用ツールではなく、集まる人たちも単なるエンジニアでもない。もう少し上の決裁権を持っている。

そういった事前情報を知っていたので、さぞオシトヤカで、御用組合のようなものを勝手に想像していた。いつものように少し遅れて会場入りしたのだが、どことなく雰囲気が想像と異なる。アグレッシブというか、攻撃的というか。もちろん矛先はベンダーである。

パネルディスカッションを司会しているのは、この業界では超有名なユーザの一人。役職も超上位にいながら、凄く中の方まで知っている。「JavaScriptでどこをどうしたら、ここにも注意が要るよね」、「それってヴァージョン幾つの時?、Ver.○の時はそれ駄目だったんだよね」。長年現場にいたことが滲み出る。何ができて、何に苦労するのか、知っているからこそ様々な決断ができる。言葉の裏側にそうした自信が漂っている。

聴衆に質問を求め、自分の答えを語り、ベンダーの回答を引き出し、会場にいる全ての人を議論に巻き込んでいく。旧知の仲の方々は、いつ指名されるか分からないので、緊張さえしてる。話題が変わる度に、PCで何かを用意したり、隣と何か確認している人もいる。そして、時間通りに議事を消化して終了。失礼ラインと自由討論のギリギリを狙う絶妙な(議事)進行。どう考えてもベンダーにはできない姿だ。

語られた言葉の中に幾つか気になることがあった。「マニュアルにはそう書いてあるけれど、実際に成功したと聞いたことがない」、「こんなに高いんだものね」。余り、公然とは聞けない話だ。私は一番後ろで聞いていたけれど、ベンダーの技術者が少し蒼ざめて見えた。

某A社系F系のイベントでは良くあることだ。なので雰囲気は知っている。でも、A社系の場合、そこではなぜだか知らないけれど、慣れっこになっているのか、緊張感がどこか緩い。バグ報告があっても「すいませんねぇ、へへ」という感じ。担当者が、本国に対して頑張ってくれているのを知ってはいるが、言う側にも「何度も言わせないで、さっさと直してよ」という疲弊感は否定できない。

バグがいつまでたっても修正されないという状況は、このユーザ会のツールでも同じらしい。国産でないのも同じで、本国から見て日本のユーザの声が届きにくいのも同じ。でも、ちょっと互いの立場が違う。明らかに、ユーザの方が、「俺達が使ってやっているんだから、多少のことには目をつむるが、大事なことはキチンと直して成長しろよ」という姿勢が見える。

そう簡単には見捨てない、でも甘えるな。そんな指針は、懇親会の乾杯挨拶にも現れていた。ユーザ会の会長は、「高いんだから使い倒しましょう」、そして、「そのためには活用事例や方法を共有しましょう」との趣旨の言葉を口にした。ベンダーのやるべきこと、ユーザのやるべきことがはっきりと分かっているのだろう。「高い」という言葉を使って、ベンダーをいじめているだけではない。使うという選択をした責任を自らに課している。高度な決裁権を持っているからこその感覚なのかもしれない。

そうした正直で嫌味にも聞こえる言葉の連呼にベンダーはどう思っているのか。興味津々で直接聞いてみた。「これバグじゃねーの」的な話題のときに、いやいやちゃんとできますよと声を上げた技術系の方がそばにいた。針のムシロですね、と声をかけたら、「はい、でも正直な方がいいんです」と即答。

できないものはできない。できることはそのノウハウを共有する。そのお手伝いをすることで、お客様のビジネスが成功することが、我々の成功ですから。変にできないこともできると言って期待させて、ビジネスを失敗させてしまっては、元も子もありません。

模範解答ともいえる返答の中に、お互いが寄り添い合って成長している姿が垣間見える。高額商品にはありがちなことだが、基本的に日本という市場の中では、このツールは、買うことのできる層には行き届いた状態だ。毎年何%もの市場拡大は望めない。ならば、今のお客さんの満足度を高めて、離脱率を抑える方策の比率が高まるのは自明の理だ。

使いこないせない機能を、素人に売りつけて市場を伸ばす戦略は、このベンダーにはない。売ったからには使い切って頂くしかないという覚悟が感じ取れた。とは言っても、膨大な機能を有するが故に高額でもあるので、そう簡単にはいかない。そんな時にユーザ会が機能する。胸のネームプレートは、競合企業が混じっていることも示しているが、そのツールのユーザという立場では、同胞だ。そこを束ねる機能を充分に果たしている。

この文書を書きながら、当然ながら、A社やM社の製品と対応とを思い浮かべる。幕張で派手に大イベントをやっていた時代から、徐々にプライベートセミナーに軸足が移り、今はコミュニティに焦点が移っているように見える。不特定多数のユーザの満足度を上げるには、ベンダー単体では弱すぎるのだ。

サポートしてくれる人を育てる。ここ数年の流れの一つの成功例を今回のユーザ会は示している。一朝一夕には成立しない。するはずもない。ベンダーとユーザの長年の接点の連続こそが、その製品やベンダーの「歴史」と呼ぶものなのだろう。

製品のVer.1から知っていることも、各種ユーザ会との接点も、全て「Webの今」に関わりあっている大切な事件なのだろう。事件はリアルタイムで進んでいる、どこかのコピーが浮かんでくる。積極的に関わった者にこそ収穫が与えられるはずだ。いい歴史を刻んで行きたい。あとで振り返ったときにもそう思えるように。

以上。/mitsui