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[174] カラー電子ペーパー:次は、重量からの開放だ

幕張でプレゼン集中修行をしている期間、全く同じ日程でFPDというイベントが開催されていた。一時間ごとにプレゼンがある身としては、ちょっと躊躇する。でも、最終日に超特急で覗き見た。滞在時間約30分。あの広い会場を思えば、無茶苦茶な客だ。

▼FPD International 2010 ~フラットパネルディスプレイの総合技術展~
http://expo.nikkeibp.co.jp/fpd/2010/

その無茶な中でも、想うことはある。当然ながら会場中がディスプレイで埋め尽くされている。お隣の我がクラウドイベントの倍の広さ。インフラからサービスまでを守備範囲としているにも関わらず、このディスプレイEXPOの方が圧倒的に大規模である。情報処理に際して、ディスプレイは必須だ。「どこでも液晶」時代の到来には、それを支えるメーカーが不可欠であることを思い起こさせる。

さて、30分で見てきた内容である。お目当ては、ニュースで伝え聞いた、ブリヂストンの「AeroBee」。カラーの電子ペーパー。実際に見て触ってみる。正直鳥肌モノである。ハード系でここまでぞくっと来たのは久々だ。白黒で充分だと思っていたのに、一気に欲しくなる。

▼株式会社ブリヂストン | 化工品 | 先端機能材 | QR-LPD
http://www.www2.bridgestone-dp.jp/adv-materials/QR-LPD/

但し、発色が悪い広報誌といった感じがする。でも良い意味でワラバンシ的な匂いがして、私には好感度はいい。どこかかすれていて、ギトギトしていない、というイメージ。だからグラビア雑誌を相手にする気などまるでない。技術者の方とも話したけれど、液晶フォトフレームと張り合う気など皆無である。その割り切りが気持ち良い。

専用ペンで、画面に赤入れをして、ページを操作して、などなど基本的な操作ができるデモ機が置いてある。A3サイズのものもある。A3を組合せて巨大なデジタルサイネージも可能であることも示している。そのデモ機はA3を組み合わせるのに縁の部分が少し広めに枠が付いていたが、基本的には端っこまで表示可能で、遠目には継ぎ目なしの巨大パネルはすぐにでも可能だとお話も聞けた。

通常はセピア色の画面を表示して、朝ごとに朝刊が届き、自由に赤ペンを入れて、赤が入ったページだけをスクラップする。そんな朝のシーン実現までの必要不可欠要素は全てクリアできている。凄い、思い描いてきた未来はすぐそこじゃないか。

ただ一般に売られるものまでは少し時間がかかりそう。ビジネス用(一般市販されていない分野)では既にモノがあるようで、iPad的な製品レベルのものもある。ただ、画面保護の意味もあり、ガラスを使用していて結構重いものだった(iPadより少し重いほど)。どこまで耐久性を考えるかは悩ましい問題だ。また、発色の意味では、毎日新聞の画面を表示していたが、あのロゴ背景に使われている青が、ほぼエメラルドグリーンに見えた。青の表示がまだ弱いというか、チューニング中というか。それもこれもどこまで「紙」を目指すのか、かもしれない。既に紙に勝るものを持っているのだから。欠点を差し引いても、魅力が勝る。

さて、迎え撃つ側である、E Ink(イーインク)。現時点でのデファクトスタンダード。ブリジストンのお向かいに位置するブースで、既に商品化された電子書籍デバイスを一挙陳列。Kindleを始めとしてAlexやSony端末など、ズラーッと並べた図は中々壮観(常にどこかで並べて欲しい)。既に商品化されていること自体が信頼性であり、揺るぎない実績であるというメッセージ。

▼E Ink
http://www.eink.com/

そして、カラー版も展示。壁にも貼るようなパネル的なものもある。両者の違いは、方式が全く違うこと。それが書き換え時に見てとれる。E Inkは画面の書き換え時に、一瞬反転するような瞬間があり、そして一気に次画面が表示される。AeroBeeは、反転するようなことはなく、一旦全画面消去されその後上から徐々に新ページが現れる。巨大な画像をブラウザで見るような感じである。好き嫌いの問題か、レスポンス速度で気にしなくなる問題か。

改めて、競争が革新を生むということを感じさせる両ブースである。こんな戦いは大歓迎だ。早くより良い未来に進みたくなる。どちらも応援したくなる。

どちらの陣営であろうと、もっともっと安くなったなら、そのまま壁になるんだろうなと想う。書き換え時に電気は必要だが、それ以外は電気は不要である。まさに「壁紙データ」を読み込ませれば、数秒で部屋の模様替えが完了する。しかもカラーである。しかも、現時点ではどぎついカラーではなく、発色が悪いというか、少しくすんだ、よく言えば落ち着いた壁紙である。

おまけに、リアルの本棚がなくなっているかもしれない。全て電子書籍になってしまっていても、私なら許す。自炊などと破壊行為が伴うから罪意識が混じり辛くなる。最初からデジタルなら心を痛める要素がない。どこにでも持ち運べて、軽くて、きちんと読めるなら大賛成だ。ただし、所蔵一覧は壁にあっても良い。壁にあるボタンを押せば、一部の領域にだけ本棚画像が現れる。所蔵書の背表紙がずらっと並んでいる。順番も変えられる。電子書籍デバイスに移しているものは、半透明でも構わない。

部屋が変わる。生活空間が激変する。勿論失われるものもあるだろう、しかし得るものも大きそうだ。紙を完全排除する必要はない。反面削減した方が良いというのも事実である。紙を浪費してきた時代から、紙をもっと大事にする時代への本格突入か。本棚が皆無になる訳ではなく、本当に紙で伝えたい、残したいコンテンツだけが紙で出版される時代。出版する側、執筆する側が、用途を吟味して、形にする時代。読む側は、そこも含めて「装丁」として受け止め、選択する。

ネットのおかげで、距離も時間も超越できた部分は大きい。次は重量からも解き放ってくれるのか。絵に描いたような整理整頓された未来だけを期待している訳ではない。電子ペーパーは、「2001年宇宙の旅」的な未来でも、「ブレードランナー」的な未来でも、共存できる。ブレードランナーのような雑然とした未来であっても全然OKだし、むしろしっくり来るように思う。

考えてみれば、今みたいにノートPCで情報が運べること、無線LANでどこでもオフィスにできること、それらはほんの少し前までは夢の領域だった。様々な障壁が凄いスピードで崩れ行っている。しかも、それが当然のことのように受け止められながら。3年後には何が当たり前になっているのだろう。5年後には何が。楽しみでしょうがない。

以上。/mitsui

ps.集客の秘訣は、おかしいくらいの自信がどこまで表せるか、かと

【日刊デジタルクリエイターズ】 [まぐまぐ!]