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24時間Illustrator「愛(Ai)はクリエイティブを救う」

[067] ドラマ

ドラマが見たくてたまらない時がある。仕事に押されて、心がガサツいて来たと思える時に。仕事をこなしていくことだけが目的になってしまっている時に。無性に、心ある人達の心ある葛藤に触れたくなる。

TVをさほど見ないせいなのか、Webデザイナを主人公にしたモノに出会わない。この業界にいると、これほど色々なことが凝縮して描ける「場」は珍しいと思えるのに。

仕事のサイズは、1ページ2,000円とかのレベルから、他メディアを巻き込んだ大規模なモノまで様々。出会う人達も、文字しか出てこないメル友から、足を引っ張るだけの人や、熱血からクールまで。頭のキレも尋常じゃない人も、どんくさくも憎めないキャラクターも、イマイマしい敵役も。何でもござれ状態だ。

誰も作ってくれなさそうなので、最近は時々夢想している。主人公は男性2人と女性1人の3人ユニット。デザイナ兼社長兼何でも屋役のK、シニカルな女性デザイナのA、プログラムおたくのI。

Kは、過去の失敗や性格から、クライアントには逆らわない。どんなリクエストも受けてしまう。ドラマの基本線は、この世話焼き気性。ついつい断りきれないで、クライアントの望む以上のことを思い描き自分達の首を絞める。AとIは、文句と嫌味を言いつつも、そんなKを憎めずに支える。最新のWebでの「表現」を時折見せつつ、隠し味に添えつつ、Kを中心とした成長物語。

ユニットのオフィスは洒落た作りで、地下室もある。そこにはサンドバックが吊るされて、Kが嫌な客にいじめられる度に重い音が響く。クライアントのワガママがどれほど"変"かを描きつつ、結局大抵をKは引き受けてしまう。

Kはそんな自分の不甲斐なさと怒りとを地下室で発散させる。その音が響くのを残りの2人は無言で聞き流す。けれど、ドロドロな展開にはならなくて、いつも暫くすると汗だくでKが駆け上がってきて、「こんなアイデアどう!?」と笑う。呆れ顔でIがFlashで動きを作り、「こんな感じ?」と聞き、Aが冷ややかに叩いて精錬する。

客先のヒヤリングでは、現実には言えない台詞をAが言い、Kが必死に取り繕う。無理のあるリクエストには「それ不要でしょう?」と言い、無理な仕事量には「死ねってことですね」と眉一つ動かさないで、睨み返す。時にはKも演技をし、上手く商談をまとめて、クライアントのビルを出てから二人でハイタッチ。Aはクールに見えながら、感動Blogには目をウルウルさせる。

CGI,Java,Flashと渡り歩いたIは、普段は無口で喜怒哀楽が薄い。それでもモニターの周りは食玩で囲まれて、昔のアニメDVDを見ては感涙にむせぶ。いつもブスッとした顔でモノ作りに精を出すが、褒められると陰でニンマリする。

試練もある。大きなクライアントの仕事を進める間に、仲間と思っていた別ユニットから吊るし上げを喰らう。仕事の本質を理解しない者達から、言いがかりのような形で、真夜中のクライアントのビルの前でなじられる。悔しさと、今に見てろという想いとが交錯する。サンドバックが揺れる。

学びもある。何もかも「人がいい」状態では経営が成り立たない。同じ作業量を高価に売る技量にも出会う。楽しければいい、良い物を出せればよいだけでは進んで行けない壁もある。何人かの友人がタカリのように集まり、何人かの友人が親身に守ってくれる。

奢りもある。自信作を持ち込んでのコンペ。技術的にも、そのプレゼン技法にも圧倒される。自分達が同じWeb屋であると名乗れないほど自信を失う。

不安もある。毎晩続く"ほぼ徹夜"作業の最中にボソッと呟く、「俺達、家庭持てないかもなぁ」、「私、子供好きなんだよね、こう見えても」。窓の外には白む空が広がる。

喜びもある。浮かんだアイデアが想い通りにモニターの中で動き出すと、3人が子供のように歓声をあげる。互いに冷静さを装おうとするが、微笑が隠せない。クライアントに反発しても、クライアントのエンドユーザのことを考えて作りこんだモノが、リリース後に評価される。怒鳴りあうように議論したクライアントが頭を掻きながら握手を求める。僕達は間違ってなかった、と思える喜びの瞬間。

ベタベタなドラマが良い。観ながら、Web屋自身が「そうそうそんな感じで生きてんだよ、俺達」って苦笑しながら見れるドラマ。観た後に、「あのクライアント、Xさんに似てない?」と思い出したり、「そういやぁ、Yさんどうしてるかな」とか。「あいつ、俺そっくり」とか。

経験したことは、良いものでも悪いものでも、それを反芻(はんすう)するように見れる気がする。実際の現場では、怒りや喜びに満ちて味わったモノも、少しは客観的に見れる気もする。少し年を経てから見る青春ドラマのようかもしれない。どこか面はゆいというか、お尻がムズムズするような恥ずかしさ。でもそんなシーンを見ると、実体験で似たような状況になった時に自分の許容度も上がっていそうな気もする。

今、Webに関わる人口はどれくらいなのだろう。作る側の人は実はそれ程でもないのかもしれないが、使う側の人はまだまだ広く深くなるだろう。どんな風な作り方がされているのか、どんな文化なのか、どんな商習慣なのか、どんな人達なのか、もう少し知られても良い。

今、私が絡むWeb開発はどんどんと機能を追及するものになりつつある。どこか青春時代から次の時代に移ろうとしている感がある。少し仕事が一段落した瞬間に思いを馳せた、Web黎明期のこの十年。誰かドラマ作りませんか?

以上。/mitsui

ps.
プログラマは、今どきの高校生男子が就きたい職業の第3位だそう。NHK教育が目をつけたのは、パッケージアプリのでもゲームのでもない、Web(Flash)のプログラマ。一緒にやったプロジェクトが番組のベース(になるはず)。どんな味付けがされるのか。NHK故に社名は出ないが、私達には汗と涙の記念碑番組。
・番組名:あしたをつかめ 誰でも使えるシステムを作れ~プログラマー~
・放送枠:NHK教育テレビ
・放送予定日:
- 2004年10月18日(月)19:30~19:55
- 2004年10月21日(木)02:25~02:50
- 2004年10月28日(土)10:30~10:55