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[167] 大人の喧嘩:不毛地帯

2010/09/30 14:00  

実はテレビが大好きだ。小さい頃、我家のTVはオンボロで、連続上映時間がかなり短かった。なのでそれ以来、延々とTVを眺めていられる状況は、私にとっては、かなり贅沢な時間になっている。問題は見ている時間がないこと。ここ一週間も殆どTVをつける間がなかった。

少し前までは、全く見ない(見れない)時期もあったのだが、敢えて見ようと努力するようにしている。それは、余りに世間と話が合わないと辛いから、話題の共通性がなくなると困るから。で、ドラマを見ようと決める(そもそもバラエティは挫折した。面白みが分からず、息子に解説を求めるレベル)。1シーズンに1本くらいは決めて、録画で良いから見る。

当然、シーズン当初は複数本を見る。そして数回で判断する、この後も時間を投資するかどうか。決め手は、基本的にリアル感と役者の粋さ。多少先が読めて退屈でも、役者が頑張っていると付き合ってしまう。またドラマのリアル感でいうと、大根は余り入り込む余地がないので安心して感動できる。

感動の仕方で、自分でも驚いたのが、「不毛地帯」。最初に引っかかったのは「言葉」。私の身の回りの言葉ではなかった。もっと上級というか、役職が上がるとこのような会話をするのかという驚き。品格という品質。ストーリー以前にそこで捕らわれた。

▼不毛地帯 - フジテレビ
http://www.fujitv.co.jp/fumouchitai/index.html
▼mitmix@Amazon - 不毛地帯
http://astore.amazon.co.jp/milkage-22?_encoding=UTF8&node=54

更に、引き込まれたのは、その評価の分かれ方。職業柄SNS的なところでは、幾つかのキーワードで時折探してみる。大きなところでは、そこそこ引っかかる。その中で刺さったのは、ある女性の評価「言葉が笑っちゃう」というものだった。怒りで真っ赤な顔になっても、敬語なんだよ、と。もちろんドラマとしての骨太さは評価している。それでも、やはり言葉が異星人語に聞こえたのだろう。

おぉここまでやるかという策略や、まぁやるだろうなと思える謀略を前にして、肩を震わせながら、敬語で応酬する。それは滑稽に見えつつ、カッコいい姿だった。闘い方を示してくれているという意味で。

考えてみれば、男一匹ガキ大将的というか、怒鳴ったり殴ったりすれば問題が解決するシンプルな世界の出自である。冷静に、青白い炎のように、怒るという方法を見るのが稀である。直情型の分かり易いリアクションしか浮かばないのが常である。だから、骨太で、しかも実在の人間のお話、というだけで、異世界モノの匂いがしてくる。

同じ人物との確執、新しい人との出会い。舞台は、商社が扱うモノだったり、時代だったり。多くの様々な絡み合いが、壮大なスケールの舞台で展開される。勿論、ご都合主義的な展開もあった。けれど、それが原作なのか、放送時間の関係なのか、すら調べる気にもならない。それだけ、ぐいぐいと引っ張り込まれた。

役者の動きを見ながら、自分の過去も見ていたのだと思う。扱う商品(といっても自動車メーカーとの提携だったり、石油プラントだったりと、私の生活圏とは無縁のものだったけれど)が、TV番組という枠内で、Webと重ね合わせやすかったのだろう。多くて二回でほぼそのプロジェクト(商品)は一段落する。短期間に凝縮されたドラマは、分かりやすく、また諸々を投影しやすい。

プロジェクト毎に用意されている、背景/課題/人間関係/展望などなどが、幾つかの思いあたる人物や事柄に当てはまっていく。あの人があー言っていたのは、そーいう事か。こー言えば状況は変わっていたのかも、そーいう考え方もあったか。ドラマの筋書き以外で、色々と気付かされた。

Webが単なるサイト構築ではなく、広報戦略に深く関わらずを得ない状況になっているのも影響している。見栄えがどうとかの話以前に、何をしたいのかを上の方と詰めて置かないと、効果測定もできないし、深い関係性もできないし、面白い仕掛けを作り上げることも困難だ。

カッコいいという定義自体が自分の中で変化してきているのだろう。紅の豚のポルコや銀幕全体から醸し出される「かっこいいとは、こういうことさ」的な雰囲気。「意地も見栄もない男なんて最低よ! 」。意地も見栄もある、闘い方。ただ闘えば良いという訳ではない。

▼mitmix@Amazon - 紅の豚 [DVD]
http://astore.amazon.co.jp/milkage-22/detail/B00005R5J6

現場での闘い方、裏方としての闘い方、個人としての闘い方、チームとしての戦い方。それぞれに葛藤があり、意味のある勝ちがあり、淋しい勝ちがあり、意味のある負けがあり、意味もない負けもある。

負け側の潔さも気分が良いものが多い。敵側だって様々な事情や止むに止まれぬ何かがある。全戦全勝はあり得ない。負けたときに学びを多くしなければ先に行きつけない。勝ち負けに関わらず、言葉は大きな位置を占めている。

Webですら、コミュニケーションが主軸になる以上、言葉の持つ意味はより強くなる。完成形でも強まるだろうけれど、それ以上に開発現場で強くなっていっている。ここ数年の動きとしての率直な感想だ。プロジェクトの成り立ちや成長過程での品格は、必ずや完成形から漂い出る。

身を引き締めて見入ったドラマ。録画したものは、DVD保存もしているけれど、シーンごとに5分程度に切り刻んだものでも幾つか残した。感動しながら学んでいる。でもそもそも品もなく未熟なので、外に出るまでには未だ未だ時間がかかりそう。それでも、日々勉強、日々蓄積。

明日、死ぬかのように生きろ。
永遠に生きるかのようにして、学べ。
 
マハトマ・ガンジー

以上。/mitsui

【日刊デジタルクリエイターズ】 [まぐまぐ!]

[166] IE9ベータ:今度のIEはちょと違うぞ

2010/09/16 14:00  

事実上初めてキャンペーンサイト構築に関わった。短い構築期間の間に様々な試行錯誤を重ねて、サイトをオープンする。期せずして、この日刊デジクリ配信日に解禁となるので、宣伝がてら書かせて頂きます。

最初頂いたお題は、IE9のキャンペーンとして、HTML5による表現力と日本を連想させるコンテンツを主題にした提案を欲しいとのこと。前者は、FlashでもSilverlightにも頼らない表現力を誇示することと、コードサンプルとなることを意味する。後者は世界中からこのキャンペーンに参加するWeb屋が選ばれるので、その中で、日本を印象つけるものを、という注文だ。

ブラウザ戦争は、昔のことのようでありながら、実は今も続いている。昔は、独自の表現力の競争という側面があったが、今始まっているのはHTML5をどこまでサポートしているかであり、更に同じソースコードをどれだけ速く且つ開発者の意図通りに動かせるかが焦点だろう。

そんな中でのIE9である。しかも、正式版は実は来年の話で、今はベータ版のキャンペーンである。マイクロソフト(MS)としても、ベータ版の段階から大規模なキャンペーンを打つのは初めてのことだそうで、諸々の部分で試行錯誤性が伝わってくるプロジェクトとなった。

話が来てすぐにブレストを開いた。既に、IE9の機能や性能については特別サイトが存在している。

▼Internet Explorer 9 Test Drive
http://ie.microsoft.com/testdrive/
▼Internet Explorer HTML, CSS, Compatibility, and More | MSDN
http://msdn.microsoft.com/en-us/ie/default

これの置き換え的なものは避けようというのが、最初の統一意見。何か一つの技術(SVGやCanvas)に特化しては、こことの差別化が図れない。だから、総合的な何かを目指す。様々な技術を組合せて、一つのコンテンツ/サイトとして成立する何か。それが今プロジェクトの起点。

次に悩んだのが、素材。技術を散りばめるとしても、何の上にするか。日本代表という言葉の具現化作業。富士山や京都、それが説明として与えられた単語でもでもあった。テーマとして考えながら、キャンペーンとは何か、という点も同時に考える。

ここで作られたものが、誰かの口(?)に上り、それが誰かに伝わり、共有されていく。それこそが今進めようとしているプロジェクトの本質だ。だとしたら、訪問者が何か感動して、それを伝えやすい仕組みも作らなければならない。

感動させるものとして、見せる/魅せるだけでは弱いだろう。自分が参加するものの方が、他人に伝えようとするエネルギーは強いはず。ならば、何か作品を作らせればよい。何を作らせるか&日本的な何か。事実上やりたいことを整理した時点で、「書道」というモチーフは決まっていたように思う。

ADが一晩で提案書のベースを作成し、それに薀蓄(ウンチク)を展開して、説得力を持たせる。進むべき道が決まれば、道は険しくとも、先に進める。地図を片手の登山のようなものだ。しかも、チームの多くの頭には、作品を共有する場面として、共通のイメージまであった。書道で共有、それは小学校の廊下に張り出されたあの風景。日本人以外には伝わり難いだろうけれど、日本人には説明不要のコンテンツだろう。

そう本日公開のサイトは、「書道」。但し、英語サイト。漢字部分以外で日本は使っていない。IE9キャンペーンという目で見たとき、英語人口の方が多いと判断したためでもある。

▼The Shodo
http://www.theshodo.com/

トップ(Home=概要説明)、ギャラリー(Gallary=作品一覧)、ライト(Write=書を書く)。基本的には3ページ構成。活用している技術は、Canvas(Write)、SVG(お手本)、Video要素(TechView=技術説明)、Audio(音声=オリジナルです!)、CSS3。技術要素としてはあげ難いけれど、それぞれの画面表示の快適さは、IE9の新しいJavaScriptエンジンによるところも大きい。

こうしたIE9の特徴を、3つの漢字としてお手本にもしている。基、速、美。基=基本:HTML5への準拠など、標準を強く意識している点。速=高速:ゼロから作り上げたというJSエンジン。美=表面だけでなく、作り手の意識がそのままユーザに伝わるというあるべき姿とも言える体験。

多少、諸々の理由で色々と抑えた機能や表現はあるけれど、結構直球勝負のサイトに仕上がったと思えている。技術の意味でも、表現の意味でも。是非是非体験いただければ。

[サイトでは書き切れなかった] 注意点)
  • Windows Vista/7の方:是非ともIE9ベータを入手の上ご体験を
  • Windows XP以下の方 :現時点ではChromeか?
  • 上記以外の方:やはり近いのはChromeか、と

技術的な話をもう一つ。Canvasは、Flashとの比較で取り上げられることも多いけれど、ブラウザ間の実装レベルでの差は未だ未だ大きい。だから色々と見比べながら、作ったし、開発途中でChromeが5になったときも焦った。そして、未実装のブラウザには申し訳ないが、Write機能は使えない。IE9でお試し下さいと記した。

HTML5の浸透とともに、こうしたブラウザ毎の対応策を練っていく時代にまた突入していくのだろう。代替案を練りながら、徐々にHTML5にステップアップしていく時代の到来。けれど、前より不毛感はない。徐々に差が開いていく暗い未来ではなく、統合されるだろうHTML5の姿が先に待っているからだろう。

まだまだ表現もコンテンツもブラウザも、切磋琢磨、精進の時代だ続くのだと再認識させてくれたプロジェクトでした。

尚、bA作以外の一連の作品は下記で紹介されます:

▼Beauty of the Web
http://www.beautyoftheweb.com/

また、日本でも下記を皮切りに様々なキャンペーンが展開されます:

▼Internet Explorer 9 の誕生を祝う会
http://welcomeie9.org/default.aspx
▼IE9 Student Day|Japan Microsoft Student Partners
http://j-msp.com/ie9/

以上。/mitsui

【日刊デジタルクリエイターズ】 [まぐまぐ!]

[165] 待ちわびたKindle3

2010/09/09 14:00  

少し迷って出遅れたが、Kindle3が届く。こんなに待ちわびたのは久しぶり。ネタ切れもあり、物欲日記を書かせて頂きます。

■ 購入

買ったのは、ここ。日本amazonでもtopに表示されるけれど、結局少しは英語で手続きをすることになる。

▼Amazon.com: Kindle Wireless Reading Device, Wi-Fi, 6" Display, Graphite - Latest Generation: Kindle Store
http://www.amazon.com/dp/B002Y27P3M

インチなど単位の面倒さはあるけれど、Kindle2との違いなども図解つきなので、眺めているだけである程度のことは分かる。購入には、米国Amazonのアカウントが必要。昔は、「.com」のメールアドレスが必要だった気がしたが、Yahoo.co.jpアカウントで問題なく登録。

さて、購入。円高を利用してと思いつつ、139$だけに注目していると、少し怒りがこみ上げる。送料と関税とがかかってくる。米国Amazonでは、送料無料のキャンーンを頻繁にやっているようだけれど、そもそも適応外であることが英語で書いてあったりする。また、送料は速達扱いのみ、他の選択肢はなかった。関税は、日本Amazonで売らないのは、お国(米国)貢献でもしているのかなと勘ぐりたくなる。

    Amazon.com items (Sold by Amazon Export Sales, Inc.):
      1  Kindle Wireless Reading De...  $139.00  1  $139.00
      Shipped via UPS International
      Tracking number: DEGITALCREATORS20100909
    -------------------------------------------------------
                          Item Subtotal:    $139.00
                 Shipping  and handling:     $20.98
                    Import Fees Deposit:      $8.00
                                  Total:    $167.98

■ 配送

トラッキングコードが付いているので、いつものように追跡してみる。そもそもが予約販売だったので、最初のうちは動きようがない。それが出荷開始から、Seattle WA US → Ontario CA US → Anchorage AK US → 成田。ん?、一歩進んで二歩下がる??、まぁいいか、それでもワクワクしてくる。

が、成田で停まる。2日ほどは停まっていた。イライラする。動かない。そんなこんなしているうちに、成田で停まっているはずのモノがいきなり家に届く。UPSは日本国内では追跡できないのかい??

■ ご対面

専用の箱、開けると鎮座するかのように、Kindle3が座っている。安っぽいいつものダンボールに、決して高級とは言いがたいプラスチックのボディ。初代iPod nanoのような感触にも及ばない。けれど、日常品として作り上げられた誇りを感じる。製作チームの心尽くしを感じる。我が子を送り出す気さえこもっている気がする。

上についていたスイッチが下になり、それをONすると、起動。そのまま使える。用途的には、自炊持参用が主なところなので、いきなりPDFを入れ込む。1冊、2冊、入れては表示テストをする。日本語ファイル名がそのまま読める。嬉しい。中々画面切り替えが早くなっている。特に次ページに進む方は、前にも先読みしてた感があったけれど、更に感じる。本を一冊最初から読み切るための専用機である。

基本的にはユーザ登録こそ最初に行うべきことである。でもしなくても使える。これで良い。ユーザ登録しなければ、コレクション(グルーピング)作成ができないなどの機能が一部制限されている。これがないと、何冊もがだらだら並ぶので、お目当ての本に辿り着くのに苛立つ。だからユーザ登録なしで愛用することは先ずない。良く考えられている。

ユーザ登録は、米国Amazonのメールアドレス+パスワード。その前に無線の設定をする必要がある。当然、向こう側にアクセスするのだから、道が必要だ。迷ったのは、英文字以外(例えば「_」など)の入力。マニュアルは最初から中に入っていて、そこから「Sym(シンボル)」ボタンであることが分かる。

無線をつなぎ、ユーザ登録を終了し、コレクションが使えるようになる。ここがまどろっこしい。ちまちまとグルーピングしていく。50冊レベルを一つのコレクションにすると、ちょっとめんどい。更に、コレクションは同じ本を複数のコレクションに登録することができるので、毎回全冊を対象に選んでいくことになる。ちまちま、である。とは言っても、大切で好きなものを磨いているような気分。多分ニコニコニヤニヤしてたと思う。

■ ネットデバイス Kindle2では無線は基本使わなかったが、今回はやってみる。ブラウザを探して、URLを打ち込む。それだけ、白黒のせいか余りピンと来ない。ポインタ(マウスカーソル)の操作は比較対象に困るくらい前時代的、かろうじてあるという程度。それでも、さすがにAmazon本家はまぁ使えるように最適化されている。ただ、お値段が一覧表示の時には出ていないので、イラッと来る。

無料の本はそれほど多くないように思う。不思議の国のアリス、緋文字、ロビンフッドの冒険、ピノキオの冒険、などなど。ただ、邦訳版で親しんだ本のサンプルが手に入るのは良いか。また、読上げ機能もまぁまぁ。スピード調整や音声調節が少しはできるようになっている。

で、辞書である。標準で付いているのはオックスフォード系2冊。米語と英語、という感じ。じっくりの時はこれでも良いかもしれないが、通常は辛いので、格納可能な辞書を探す。

で、英辞郎。既に英辞郎を持っているなら、自作する方法もググレば出てくる。持ってないなら、英英で行くかどうか次第か。ポインタの操作は多少まどろっこしいけれど、これ一台で完結して英語が読めるのは良いかも。

■ その他

ボディとしては、実は小さくなって軽くなっているはずなのに、ずしりと来る。重さのバランスはKindle2の方が良いように思える。かろうじて片手で左右を持つことができるサイズになってしまったので、未だ持ち方に悩んでいるというのが本音。

あと、気になったのが、実はハングしてしまったことが数回。まだ調べ切れていないけれど、PDFを二階層のフォルダにして置いているのだが、どうも日本語のフォルダはよろしくないようだ。Kindleは立ち上がりのたびに全ファイルをなめているように見える、その上でどのコレクションに属しているかをチェックしている模様。なので、最初は0件みたいな瞬間がある。

自炊系の動きは、裁断済み書籍がオークションに広がりつつあり、PDFをおまけにつける動きも見える。ユーザは書を持って野に出たがっているかのようだ。対して、出版社側はフォーマット作りと作家集めに精を出している。この微妙なズレが気にかかる。ユーザが欲しがるものを出すのが商売の基本だろうに。

まだまだ試行錯誤をするけれど、ディスク容量も増え、持ち歩ける冊数が倍増している。個人的には、姿勢を正して音読できるKindle系がデジタル教科書の基本だと思っていることもあり、益々楽しみ。これで本棚がダイエットできるかが、広がりのバロメータだろう。

以上。/mitsui

【日刊デジタルクリエイターズ】 [まぐまぐ!]

[164] 脳内構築力とリアル化力

2010/09/02 14:00  

「カミーユ・クローデル」という映画がある。ロダンの愛人:カミーユの、愛するほどに隔たりが深まるという哀しい実話と、イザベル・アジャーニの熱演が生々しく痛々しい物語。もう何年も前に観たのに、銀幕なのに降りしきる雨の冷たさが、未だに思い出せる。

▼mitmix@Amazon - カミーユ・クローデル [DVD]
http://astore.amazon.co.jp/milkage-22/detail/B00005B3LB

全体的に哀しいストーリーだが、幾つか心休まるシーンがある。主人公カミーユが小さな女の子の前で、ウサギを彫るシーン。石を彫り進むうちに、徐々にウサギが姿を現す。その見事さに、女の子は「どうして中にウサギがいるって分かったの?」と声を上げる。その質問に戸惑うようなイザベル・アジャーニの顔が見事だった。

この問答が時折頭に浮かんでくる。それは、脳内に構築されたものと、リアルの対比が分かり易いからだろうと思う。

大した作品は作れなかったけれど、大学の頃に絵や彫刻に耽った時期がある。絵が好きというよりも、絵を描いている生活に惹かれていたレベルの話である。そうではあったけれど、時たま気に入った作品が生まれることがある。別に誰に褒められる訳でもないのだけれど、何だか気に入った作品達。それらは、間違いなく、当初(あるいは直前)に脳内にイメージしたものが、ドンピシャで目の前に構築できたと思える作品達だった。

いつもは描きながら様々なことを試行錯誤する。でも、気に入った作品では、その過程は実は少なくて、一直線に「思い描いたもの」に向かって進めていたと記憶している。そんなことが稀だからこそ、記憶に残っているし、「どうしてウサギが中にいるって...」と質問されるような確信的に進めて行けたように思えている。

それは、職として就いたプログラマでも起こった。脳内にイメージできた通りにコーディングできた時の嬉しさ。そのイメージが機能的に合っていた(バグがない)だけではなく、一直線にコーディングできたことも、創り上げた喜びを深くした。

コーディングは、基本的にはテストを意識しながらし進める訳だが、想定していなかったテストすら軽々とパスできた場合、「俺って天才?」的な喜びにつながる。それが脳内で構築したイメージを土台に進めていたものなら、尚のこと不思議さが湧いて来る。

そのあたりの謎解きの究明はしていないけれど、積み上げた経験が様々な角度からの試験を既にしているのだろうと思うことにしている。確かに、利用者のイメージや利用シーンが分かっているときこそ、脳内構築の精度は高い。

そうした精度の高さには、デザインの分野でも時々驚かされる。優れたデザインは、見た目の色合いやレイアウト的な要素だけでなく、どう使われるのかを想定した、つまり情報設計(IA)的な部分の精度の高さが鍵となる。どの角度から見ても破綻しないこと、それが求められる。そして、それが少ない情報収集期間の中で、綿密に設計されていた場合ほど、見事さに溜息が出る。

Webデザインの場では、出来上がってきたデザイン案を色々な立場から検証する。○○を探して、このページに辿り着いた人はどう動くのか、その時に迷子にさせないか、求める道筋に正しく誘導できるのか。ボタンの形状や、使っているメタファー(隠喩/暗喩)、トーン&マナー。それらが不整合を起こさないかも確認される。

過酷なテストだと時々思う。そんなの想定外だよと言い出したい気持ちも分かる。でも、だからこそ、多くのテストにパスするデザインを初期段階で見せられるとき、驚き感心する。その人の脳内では何が起こっているんだろうとも。

思い描いた通りに実現すること。それはプログラミングやデザインに限らないのかも、と最近感じている。例えば、マネージメント。チームマネージメントや、プロジェクトマネージメントが分かり易い。

複数の価値観を持った人間の集団を、きちんと御しながら、御されながら、目的地に進めていく力。これを脳内で構築できて実施できたら凄いことだと思う。そして、プログラミングやデザインでそうした様々な角度からの検証ができるのであれば、様々な価値観からの検証も可能ではないのかと思ってきている。

勿論、今の自分にできるかどうかの議論ではない。ただ、コーディングやお作法を分かった上で、脳内プログラミングができるように、人間への理解が深まれば、脳内マネージメントを構築してリアル化することも、絵空事ではないように思える。

そして、その先にあるもの。Web屋としては、Webサイト担当者なのかな、と。

脳内で、来訪者の特性に合わせて、そのサイトが提供すべき情報をきちんと渡せて、更に植えつけるべきブランディングイメージも刷り込むシナリオを描ききって、それを実装する(させる)手腕。

Webがあって当たり前の状況になってこそ必要なスキル。企業はそうした責任と能力を備えた担当者を見つけ、配置しなければならない時代になってきた。技術が進むほどに、見極めも難しくなり、自分の思いと企業としての想いに挟まれつつ、適切な光明に向けて日々改良を進めていくこと。ハードルも日々高まっているのだろう。

最後にTweetからの一言を思い出したので、記す。担当者の狙いや企みの大切さ。そして、その重みや覚悟。諸々のことが、この言葉から広がりました。下記は別にサイトに限定していませんが、現実的にはサイトというかネット上での比重は嫌がおうにも高いでしょう。低価格化が進むWebサイト開発ですが、担うべき任務の大きさに武者震いします。

Twitter / NHK広報局: 広報は広告とは違って、皆さんが持っている...
http://twitter.com/NHK_PR/status/7551428263
"広報は広告とは違って、皆さんが持っているNHKのイメージを再構築する仕事なんです。「NHKは真面目でお固い」というイメージ(←実は大切にしています)に少しだけ「新しい何か」を加えたいな、と願っております。 RT @75mix: @NHK_PR NHKってお堅いイメージがある"

以上。/mitsui

【日刊デジタルクリエイターズ】 [まぐまぐ!]