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24時間Illustrator「愛(Ai)はクリエイティブを救う」

[188] 娘の巣立ち

娘が巣立つ。大学入学のために家を出る。約30年前に自分が家を出るのとは、諸々異なる。自分がこんなに心配する親バカだと認識するのも含めて、何だか可笑しい。

古い船には新しい水夫が乗り込んで行くだろう
古い船をいま 動かせるのは古い水夫じゃないだろう
なぜなら古い船も 新しい船のように新しい海へ出る
古い水夫は知っているのサ 新しい海のこわさを
  吉田拓郎「イメージの詩」

明らかに古い水夫の私が、新しい海に漕ぎ出す娘にしてあげられることを考える。職業柄、Webというかネット系に偏る。iPhoneを契約し、WiMAXを準備する。パソコンは学校が始まってからで良いという。それ以外は、白もの家電系の調達。冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機。TVは不要という。時代を感じる。育ててきた側の私に依存する部分かもしれない。

私が住んだ四畳半とは比べ物にならない豪華さ。比べてもしょうがないのは分かりつつ、「へー」と感心している自分が居る。面積比で約2倍、家賃も約2倍。でも恐らくは水準より少し低いくらいだろう。私の部屋は2.5万/月で全部で六畳分。半畳の玄関部分+流し、一畳分の押し入れ、そして畳が四枚半。トイレ共同、風呂なし。お風呂は近くに銭湯が3つあり、気分によって変えた。後半はコインシャワーなるものが登場し、10分100円で、女性が出てくるとちょっとドキドキしたw。洗濯は週末にコインランドリー。一階は大家さんで、二階部分に4部屋。大家さんから、たまの休日にお昼のカレーをお呼ばれした。季節の変わり目を、二階の窓から、大家さんの庭で感じていた。当時でもちょっと珍しい古風なものだった。

部屋の中は、本棚と机、広げるとマットになるソファーベッド(もどき)。冷蔵庫は先住者から数千円で譲ってもらい、電子レンジなどある訳もなく、暖めるのはオーブントースターで。TVは買った記憶がないので、拾って来た気がする。はやり始めた収納ボックスも幾つか頂いたっけ。部屋の中央に座ると全てに手が届く快適な世界。ちなみに当時のパイプ机は今なお我家で現役だ。

ネットなど夢にも望まず、情報はもっぱら図書館と本屋とコンビニ。図書館にない情報は、専門書を本屋の中で覚え、外に出てから紙に書き写して試験をしのいだ。マンガも含めて、そんなこんなの大量の立ち読みでもお世話になった。読んだ作品は立ち読みした時の寒さ暑さとともに記憶している。南阿佐ヶ谷のかの本屋には足を向けて眠れないw。

未だ権利金なるものが電話にあった頃だった。諸々のウヤムヤのうちに固定電話は、権利金と共に必要とされなくなり、ネットの回線も明らかに無線ルータの方が割安だ。プロバイダも引き止めに大変だと思う。TVもリアルで見ようと思わない世代が増え、ビデオもDVDに代わり、同時にビデオデッキもPCでまかなえるようになる。TV局というよりも、ケーブルTVとか、コンテンツと個人の視聴を繋ぐ部分が揺れ動いている。

思いっきりの覚悟を持って家を出たのが恥ずかしくなるくらいに、娘の巣立ちは簡素で、気がつくと色んなものが未だ我家にある。いつだって取りに帰れば良いというか、リセットというかUnDoというか、そんな感じがありありとしている。初めて獲得した(する)自由よりも、繋がっていることを志向している。

それは、FaceTimeを試した時にも強烈に感じた。古風な言い方をすれば、テレビ電話。彼女のiPhoneと我家のiPadでテレビ電話。いやいや、居なくなった感じがしないよ。互いの夕飯まで一目で分かる。

▼アップル - FaceTime - MacからiPhone 4とビデオ通話を。
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おまけに何やらキャンペーンで、「みまもりケータイ」も貰ったので、電話をかける感覚もなくお話しができる。

▼みまもりケータイ | ソフトバンクモバイル
http://goo.gl/WvAEb

独立とか自立とかも雲(クラウド)の中でアイマイモコとしてきたのかもしれない。そぎ落とされた自律の集合体が、緩やかな共同体意識を育てて次世代社会の形を作るのか。ちょっと想像がつかない。

諸々を揃えながら、実質月額何円とか、驚きの何円引き、とか分かり難く、かつ嘘臭いセールスコピーに振り回される。娘が「いまどき」に値するかどうかは微妙だけれど、彼女も明らかに「胡散臭い」と感じていて、刺さっていない。手垢にまみれた売り言葉が虚しく意味なく空回りしている。

同じものに高額を払うのは無駄、という感性は持っている。なので、購入したものの一部は中古品。4年程度で切り替えるならば、新品である必要はない。娘もこだわらない。毎年新しいものを出す意味すら疑いたくなる。充分に良いものが既にある。

その流れで、中国製の問題もちょっと考える。店の人の台詞も面白い。「今は中国製だって全然問題ないですよ」と言いつつ、洗濯機の音なんなんかは「やっぱり日本製ですよ」と平然と前言撤回する。良いものを安く作れる国が豊かなのではなかろうかとも想う。

娘は吉田拓郎もほぼ知らない。何度か曲やDVDは見せた。「たどり着いたらいつも雨降り」も「唇をかみしめて」も「人生を語らず」も伝えた。Youtubeで中島みゆきとの共演も一緒に見た。「ファイト!」も「恨みます」も「時代」も語って聞かせた。でもピンと来てないのが表情から読み解ける。

古い船は彼女にとってどうなんだろう。新しい海はどうなんだろう。新しい門出は正しく通過儀礼となるのだろうか。古い水夫の記憶の幾ばくかを共有しつつ進むのだろうか、それともそんなものはそもそも不要なのだろうか。

私にとっては、吉田拓郎も中島みゆきもあの四畳半も、あの時に出会っていなかったら、多分今の自分のどこかが変わっていただろう大切なものだ。今の子供たちにとって、それは何なのだろう。ネットという基盤的なものの上で、色んな価値観が揺れている。デジタルネイティブとまでは言えない娘の世代でも、明らかに相容れない「境界線」の存在を感じる。

いずれにしても時間は進む。古い水夫が進める限界線はそれほど遠くない。良い時代になって欲しい。そして願わくば、豊かな時代に。

以上。/mitsui

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  • みまもりケータイ、2を未だ見てないけれど、1は時間設定とか諸々UIはもっと何とかしようよと思った。実家のばぁちゃんは喜んだけれど。