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[203] Web担当者が持つべき7つの資質

1年半前に書いた文書を、再考してみました。ここ十年以上のWeb屋としての働きを、何かの形にできなかと模索している流れでです。一番気になっているのは、やはり人材。色んな方に会えたけれど、どんな人が最適なのだろうという疑問。

ウェブ担当者に必要な資質は6つだと以前は書きましたが、1つ増えて7つです。企業の形態によって求められる量やバランスは変わるでしょうが、サイトが担う任務を考えると、要素としてはどれも不可欠だと思います。

1)【統率力】チームを編成し装備を整え、険しい山頂を目指す、登山隊のリーダー。
本当はサイトが出来いてからの仕事の方が長く厳しいものですが、「サイト構築」が一番目立つ仕事です。それは険しい山頂を目指すような登山隊の行程のようなものです。期日までにサイト構築を完了させ、ローンチ(開店)という「登頂」を達成する道のりです。そのためのチーム作りや、戦略立案、スケジュールやサーバなどの装備など、一団を率いて行くためには、この資質が必要です。
2)【維持力】24時間365日、店内の全ての商品に気を配り続ける、コンビニ店長。
開店してからは、まさに24時間365日オープンの状態が続きます。そこに掲載される情報の全てに責任を負うことになります。誰が作り(書き)、誰が承認したとしても、あなたの店に並べられるという意識を持つ必要があります。書類上の責任者が誰であろうと、自分の店に何が置かれているか、何が不足したか、明日までにどんな新しいものを用意しておくべきかを気にする店主は必須です。
3)【算段力】パーティから夜食ごはんまで、贅沢な食材/アリモノででも最善の食卓を目指す、料理人。
常に最高の食材が入手できるとは限りません。万全の用意をしたつもりなのに、特別な素材が手に入ってしまうかもしれません。用意のない中で突然のオーダーを受ける場合もあります。そしてどんな時でも、食べたい人がいるのであれば、最善の食卓をスピーディーに用意すべきです。綿密な計画に則りつつも、突発的なことにも対応する能力が求められます。そして与えられた食材をきちんと活かし切る能力も、です。
4)【剪定力】技術/チーム/個人/タイミングを見極め、伸びるものを伸ばし切るべきを切る、剪定師。
担当者の多くは、技術の詳細を実装レベルで知る必要はありません。ソフトやツールも使いこなす必要もない場合も多いでしょう。知っているに越したことはありませんが、知らなければ指揮が執れないかと問われれば、NOです。それでも、大局的に技術もチームも評価しなければなりません。そして、必要なものを活かす戦術を採る必要が日々起こります。様々な技術やスキルに対する公平な判断力と育成の視点が求められます。
5)【翻訳力】様々な事柄を様々な人に分かってもらえるよう、言葉を選び伝える、通訳者。
あなた自身も意味を理解するのに困るような言葉や手法や技術を、多部署の人たちや、時によっては社外の方や顧客にも説明したりする状況が多々発生します。そこで円滑な流れを掴むためにも、言葉の引き出しは多めに持つ必要がありますし、伝わったかを相手の顔色から読み取らなければなりません。技術翻訳をし、マーケティングの言葉を操り、顧客の気持ちを代弁するのです。しかも機械翻訳では伝わりません。
6)【公正力】ルールに則って厳密かつ円滑にゲーム(プロジェクト)を進行・成立させる審判員
プロジェクトはどこかスポーツに似ています。グダグダな試合が試合として成立していないように感じるように、継続はしていたとしても「成立」していないプロジェクトが存在します。守るべきルールが守られず、ただ惰性や、降ろし方の分からない拳のような、破綻している状態です。こうした疲弊ばかりを産むプロジェクトに共通していることは、公平なレフリーがいないということです。放置の先に維持される秩序は殆どありません。誰かが目を光らせないと、余程自律心が強くない限り、乱れます。ですから公正な審判員が必要です。基本的にはプロジェクトオーナーがその任を負うのが自然です。注意が要るのは、社内外共にフェアであることです。納品物や期日に関して、発注者であろうと守るべきを守るべきです。それがプロジェクトを成立させる影の機動力になります。
7)【応援力】常にアンテナを張り、求めない人の所へも行きかねない、おせっかいお見合いオバさん。
ネガティブではなくポジティブな意味での資質です。時代の流れが早く厳しくなっている以上、常にどこかしこに問題があります。それらの幾つかはまとめて対処した方が効率が良い場合が多々あるでしょう。また、ある程度共通項を見つけ出してから解決した方が、将来的にも汎用的な解になったりもします。そのためにも、「おせっかいアンテナ」を張り巡らせた人が必要です。課題の所在を示す地図を脳内に描け、本能的に動き回って、マッチング(お見合い)を調整できる人は、ウェブという無形の情報構築物を整備するには打って付けの人材です。逆に、現場から動くのをじっと待つお役所受付タイプでは、提案する方も萎縮して、機会損失を招きかねません。ITに関するノウハウが集積しているウェブ担当者が自ら動くことが円滑かつスピーディな問題解決を実現できるのです。

これらが必須なのは、顧客に対する「誠実さ」を実行する上で、どれも大切だからです。但し、上記全ての資質を完全に備えることは不可能ですし、完全に備えてしまったら諸々自己矛盾を抱えてしまいます(時に矛盾する決断をせざるを得ない状況に陥ります)。どの資質をも、あるバランスで持つことが大切で、そのバランスがウェブ担当者としての「個性」になります。個性なので、優劣はありません。対処する課題に多少の向き不向きがあり、進め方や管理の仕方に特徴が現れるだけです。けれど気をつけて頂きたいのは、どれか一つでも全く欠落している場合には、問題が発生する可能性が高まるという点です。

特に最後の「おせっかい」資質は、他にしっくりした表現が思いつかないのですが、訓練や学習によって習得し難いものです。しかし、今まで出会った成功しているウェブ担当者は、まず間違いなく「おせっかい」です。何かしら世話を焼くことが好きで、困っている人を放っておけず、大なり小なり職域を限定し難い「雑用係」という自称のもと「何でも屋」を担っています。社内でも様々な問題を見て見ぬ振りができない資質は、顧客の課題を他人事にはできないとする誠実な姿勢と関連があるのでしょう。

既にウェブ担当者に任命された方は、会社がこれらの素養をあなたに認めたからでしょう。しかし、改めて列挙したものを見た時に心許なく感じるものがあるのであれば、早めに育てることをお勧めします。ただ最新技術に長けているとか、数字解析に強いだけで選ばれたとしたら、苦難の道が待ち受けています。残念ながら、技術知識でカバーできる領域は、通常思うほどには広くはありません。ウェブが顧客との接点である以上、リーダーシップを含めた、基本的に人との関わり方に関するスキルが土台となるからです。上記のリーダー気質を支えるのは、指揮も配慮も伝達も、どれもコミュニケーション能力であり、一朝一夕には身につけられないものです。

これらの習得への一番の近道は、その道のプロフェッショナルや先人達を直に見て感化されることです。書籍にもネット上にも様々な武勇伝が見つけられますし、ウェブ担当者の勉強会にでるのも良いでしょう。それらを読んだり体験して、感じ入って下さい。異分野も役に立ちます。真面目に料理の達人の技を見ることなどです。彼らの包丁さばきやリズムやチーム体制を、ウェブ担当者目線で見れば、必ず活用できるモノがあるでしょう。秋葉原の包丁売りのプレゼンテーションも見事です。彼らの技を見て盗んで下さい。企業を半ば代表して顧客と向き合う姿勢は、自分で感じない限り、必要性も理解できないし、習得も難しいはずです。大切なのは、まず意識し自覚することでしょう。

また、これからウェブ担当者を選ぶ側に立つ人であれば、これらの素養を参考にして下さい。資質がない方に任せた場合、本人だけでなく企業としても辛い事態を経験することになりかねません。顧客とほぼ直に接する仕事は、通常業務とは全く別次元のストレスがかかります。それでもサイト運営は巧く継続せざるを得ないものですから、「適任者」でないと担いきれません。更に、任せっぱなしにするのも禁じ手で、会社規模にも依りますが、体制作りや育成も視野に入れる必要があります。ウェブの仕事は真剣に取り組むほどに、顧客との最前線に担当者を赴かせることになります。だからこそ「最高の社員」を選ぶ必要があります。

次世代のWebの未来が今よりも、もっともっと輝くことを願いつつ。

以上。/mitsui